なずなよなずな

ふと本棚から目についた本。
久しぶりに開いてみると、そのお話のあまりにも素晴しいことに驚く。
そして、私がそのことを長い間忘れていたことに気付く。
かつてはあんなに身近だったのに。
「なずなよなずな」はとてもいい。選集にも入っていないけれど、最後が特にいいと思う。
大島弓子さんの作品では、最後に姿を見かけるストーリーのものもあったけれど、これはそうではない。
だからこそ、本当にきりりとしている。


「ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ」の凄さは今更言うまでも無い。
ドストエフスキーの「罪と罰」が原作だけれど、こんなにも清らかで原作に寄り添い高める作品を知らない。
ソーニャの瞳を「ロシアの冬の晴れた空の色」とラスコーリニコフが言う。
青森の冬の空を見た後だと、その色のイメージも嘗てと違う、清らかな透き通るような青を思う。


「きらら星人応答せよ」も私には最高に懐かしい作品。一時はいつも近くに置いていた。
これを読んで、本当に南極に行くために勉強を始めた頃を思い出す。もう少しで本当にその途に進むところだった。
実は、今でも、この頃の大島弓子さんの繪を真似して、いろいろなものに少女の顔を描いたりしている。


身を清められる体験とはこのことだ。
また新たなシーズンが始まるこのときに、この本の方から私を呼んでくれたことを有り難く思う。

なずなよなずな (白泉社文庫)

なずなよなずな (白泉社文庫)