勝負何とか、という表現があります。
ここ一番で使うもの、ということかと思います。
万年筆を通常の筆記具として使っている私ですが、例えば、私が日本の敗戦を認める文書に各国代表の前で調印するような状況にあると仮定したとき、そのような場面でも誇りと矜恃を持って使うであろう万年筆は、セーラー旧銘木シリーズ黒檀だと思っています。日本的な雰囲気ということでは蒔絵や漆、陶磁器のものなどもあろうと思いますが、私としては、武士の刀としてこの銘木シリーズのペンを使いたいと思います。


モンブラン146の書き味は絶妙ですし、ペリカンM450の端正な爽やかさ、パイロットの品の良さ、セーラーのニブ露出タイプの味のある書き心地、高校の頃から愛用していたプラチナ18、品格を感じさせ触っているだけでうれしくなる(或いは触るのも憚られるほど美しい)クローズドエンド楔など、大好きな万年筆は多くありますが、私にとって、戦場に赴く際、或いは、静かな古民家のような所で、机にしろ文机にしろ、端正に座って書き物をする際には、セーラー旧銘木シリーズを使うだろうと思うます。
現在、職場では、この銘木シリーズの万年筆を一番取り出しやすい胸ポケットと、常用しているバインダーノートに差し、仕事に向かうようにしています。


私のお世話になっている Pen and Message の吉宗さんが、今日のブログに「気合いを入れて書くときに旧銘木シリーズ鉄刀木を使った」と書かれていて、少しびっくりしました。私は、セーラーのブルーブラックで使っていますが滑らかでよい書き味と思います。ただ、例えば、知らない人にいろいろ試筆してもらった上で、このセーラー旧銘木シリーズで書いてもらうと「昔の万年筆みたいだね」とよく言われます。
ワークショップ“きれいな文字を書こう”卒業制作
思い出を形にするもの


この万年筆は、書き味だけではなく、全体の佇まいが如何にも日本の武士の刀という雰囲気で、和服で文机に向かっている端正な男性が筆の代わりに手にしていて違和感のないところがよいと思っています。


こうした万年筆が昨年製造中止になってしまったのは淋しいことですが、聞けば随分手間のかかる造りであったとのこと。予め製造停止を知らせ、最終の注文を募ってそれを製造した後にラインを止めたことは良心的ということであるかも知れません。


実は、セーラー100周年の島桑の万年筆は、写真や記事で見る限り、また刀として使えるものなのではないかと思っています。
因みに、プロフィット30周年ブライヤーはフェンシングの剣のイメージで、ガスコン魂とか騎士道とかという雰囲気かと思っています。
島桑
セーラー百周年島桑