昨日は、久しぶりに根津の傘屋さんへ。
この傘屋さんは本当によい傘を揃えていると思う。
置いてある商品は、ほとんど一品ものと言えるようなものなので、出会いという感じだ。
私が嘗て購入した傘も昨日は見つけられなかった。
とても素敵な傘があったので2本購入。
一つは、小さな十字(クロス)がついている傘。これは、私の感覚からすると、最高におしゃれな逸品。
とても薄いクリーム色の傘袋の上部に、本当にさりげなく濃い茶色のクロスとそれを菱形で囲んだ模様が傘を巻くように付いている。
実際の傘も袋と同様の薄いクリーム色だが、縁に傘袋と同様のクロスとそれを菱形で囲んだ模様が付いている。
ただ、傘の方は骨が8本があって、それによって分けられている各面の縁がグリーン、オレンジ、ブラウン、ライトブルーの4色で彩りされている。
雨に当たる方には線で模様が描かれ、内側は帯状に縁にそれぞれの色の帯が付き、模様の部分が白抜きになっている。
基調となる色も、薄いクリーム色と言ったが、これは軽い色ではない。深い味わいのある色になっている。
握りはオレンジで模様入りのアクリルだが、ちょっとセルロイド風のところが懐かしい。
神戸のオカダ傘店の傘も好きだが、やはり神戸と江戸では色使いや柄が違うところが面白く、それぞれに味わいがある。
もう一本購入したものは、一見真っ黒のようだが、手鞠の織り柄が入っている。傘の縁には細く金糸が走っている。
握りは木を彫って作ってある。
これもやはり本当にさりげない。しかし、自宅で見ると凄い迫力だった。
本当は、もう一本購入したかったのだが、一度に三本というのもどうかと思い、今回は思いとどまった。
しかし、次に行くときには是非購入したいと思う。
また、絹の傘も見せてもらう。
絹というと、華奢で嵐の中を差して歩くときもある傘の素材として大丈夫なのかな、何で敢えて使うのだろう、と思い、おばさんに聞いてみる。
すると、絹の傘はいい、開いたときのシャ、という音がいい、という。
折角なので、開かせてもらうことにする。
渡してもらうと、まず、傘袋の肌触りが素晴らしい。
また、布も厚い織りで、頼りになる感じだ。
このお店には絹の紳士用長傘は一種類しか置いていないが、色は、なんというかクリーム色に紫と灰色が入ったような実に美しい色で、どのような服装にも合う。
そして、実際に開いてみると、確かによい音がする。
優しく、品があり、筋を通している雰囲気。よい女性(男性も、かな)のような雰囲気だ。
これは流石に値段が高いので、将来の目標とすることにした。
或いは、大切な人への贈り物にしても良いかな、と思った。

こちらのお店で私が好きなのは、勿論商品が素晴らしいこともあるのだが、店主の方(おばさん)が商売に誇りを持っていることだ。
このお店では、値段のことばかり言う人はあまりよく思われないと思うが、また全然値切らない、というのも余り歓迎されないような感じがする。
神戸でも思ったが、値段のことを全く言わないのは、お金を大切にしていないというか、スノッブというか自分を偽っているというか、価値についてお店の人とコミュニケーションするつもりがないというか、まあそんな感じに受け取られてしまう、ということだ。
勿論、明確に「負けて下さい」というような言葉にしなくてもよいのだけれど、世の中において大切なお金というものをやりとりする際には、その根拠となっているモノの価値を含めて、意思疎通をする意欲を示すことが大切と考えている、という感じだ。
会計の時には、五つ玉の算盤を出して、はじきながら計算してくれる。
そして、私に金額を示し「これでどう?」といい、自ら「うん、いい感じだ」と言う。
言ってから自分でも可笑しいと思ったのか、笑っている。
別に解説はしてくれなかったが、つまり自分にとっても、お客にとっても、或いは傘を作ってくれた人にとっても、バランスよくよい値段にした、という意味であることは私にも分かるのだった。