ゼンツェの接吻

松籟社シュティフター作品集第三巻所収。
これは凄まじいヲタ小説。
最近、シュティフターのヲタ度の高さに驚くことが多いが、この小説も相当なものだった。
大体、許嫁的な関係が出てくるところからして雰囲気が怪しい。
更に、美少女の方から接吻をしてくるとか、お互いに意地を張り合うとか、誠に若々しい。
シュティフターの作品を読んでいると、そうした若さゆえの気持ちの行き違いに改めて気づかされると共に、周囲の大人が気遣い、結ばれるべき二人を導くことが大切であることを思う。その気遣いとは、二人が決定的な破局に到る前に二人を暫し離し、お互いに対する思いを胸に、それぞれの為すべきことに精進させる、ということなのだろう。