紡ぐ

Bill EvansのDVDを購入して見てみました。
その解説を読むと、特にMy foolish heartの所の説明で、曲を紡ぎ出している、という言葉がありました。ピアノに屈み込むようにして弾いている姿は確かにそんな感じですね。
儚い命の虫が、その命を吐き出しながら作る糸。
蚕は繭を作り始めてからは一切飲食をせずにその身を燃やして糸を吐く。蛹から孵れば、やはり何も摂ることなくひたすらに異性を求めて果てる。
Bill Evansの一生はどうだったのでしょうか。
また伝記も読んでみたいと思いますが、私はやはりFitzgeraldとイメージが重なります。生きていた年代は、Fitzgeraldが1896-1940、Bill Evansが1930-1980かと思いますので、お互いの活動が重なっていたわけではありませんが。Fitzgeraldは自らを「二流」と言っていましたし、Bill Evansも実はそうした気持ちがあったのかもしれません。二人とも実は高いところにいながら、自らの謙虚さと弱さ、それ故の凛々しさを持っていたように思います。一方はアルコール、一方は麻薬に溺れるということもありました。
それでも、ぎりぎりのところで踏みとどまっていた、その姿勢が二人の作品から感じられる力強い品の良さと凛々しさにつながっているのかもしれません。