文こと葉なめき人

枕草子二百四十三段

わが使う人などの、「なにとおわする、のたまふ」などいふ、いとにくし。

使用人が主人のことを来客に向かって敬語で話すことへの批判、とのことです。
枕草子も感覚で書いていて、自分の感覚による判断に自信を持っています。
その判断は、現代においてそのまま通用する、乃至はそのまま表現することが適当でないものもありますが、真に自分を持っている人は自らを改めることもできるかと思います。
この引用部分について言えば、現代でも通用するでしょうし、またこれは使用人(社員、と言えましょうか)が本来の企業の目的も見失っている、ひいてはその部下を使っている上司の意識や部下に対する指導も不適切(上司自身が企業の目的を見失っている可能性がある)ということになりましょうか。


9-11の際、現場近くのスターバックスの店員が、被害者に上げる水を探していた消防士に高価で水を売りつけた、という事件があり、スターバックスはその評価の回復に大変苦労した、と聞いた。*1
これは組織文化の問題、と言う人もいる。*2
よき組織文化を形成し、発展させ、変革することは難しい。


組織を支えるものは信頼だろうと思う。
それも表面的な信頼ではなくて、本当に心からの信頼が必要だ。
仕事の上で裏切られると信頼を失ってしまう。
それには、故意の裏切りだけではなく、能力がないために期待された水準の仕事ができない、ということも含まれる。
こうした信頼の喪失は、特に同一組織内である場合には、かなり度々失敗なり裏切りがないと起こらないのだが、それだけに一旦信頼が失われた場合には、そのことが本人にも分かる。
例えば別の会社の人であれば、それでおつきあいがなくなる、ということで済む。
勿論、企業としては問題だが、信頼を失ったその人個人としてはそれで自らの安定を取り戻すことができる。
しかし、同一組織内ではそうはいかない。早期に異動させる、ということが重要だろう。
ポジションが変われば、仕事の内容も変わるし、そのポジションの場によって上司を含む周囲の人々も変わる。見る目も変わってきて、また能力も発揮できるかもしれない。
こうしたことを早期にやる必要があると思う。
その意味でも、能力や業績の評価をする人は、それに基づいて人材をどう生かすか、ということを考え、然るべきポジションの人にフィードバックすることが大切だ。
フィードバックする相手は、その人の上司、人事担当者等になろう。
尤も、評価する者自身がその上司である場合もあろう。その場合こそ、難しい。自分の好みや自らに対する評価を離れて、早期に、その場には適さない人材によいフィールドを見つけるチャンスを提供するべきだろう。それはドライに見えるかもしれないが、最もよい方法に思われる。

*1:http://www.geocities.jp/starbuckslinks/company/history.htmの2001年の欄など

*2:印南一路「すぐれた組織の意志決定」p.273、2003年5月25日中公文庫