聖者

台風一過という感じの爽やかな、何となく秋の気配も感じる日。
この「聖者」は、久しぶりに1日で一気に読んでしまった本。
正におとぎ話だ。
おとぎ話なので、ちょっと納得しがたい展開もあるけれど、しかし、世の中自体が矛盾に満ちたものなのだからそれを云々することもない。
王様と国璽尚書の話。
国璽尚書は、イスラムキリスト教、王(預かっている国)と自らの思いの感で揺れ、苦しむが聖者となる。
シッダールタのような聖者とは違うし、その意味では最後まで聖者ではなかったのかもしれない。
しかし、苦悩に殉じたという意味でやはり聖者と呼ぶにふさわしい。
昭和17年に発行された文庫本の復刊で旧字旧仮名遣いだけれど全く古さを感じさせない。
むしろ表現が懐かしい。
マイエルの本は、当時は4冊翻訳されていたらしい。
もっと読んでみたくなった。
そして、私の人生も、改めて一つのおとぎ話にしてみたい、と思った。


聖者
マイエル 著 伊藤 武雄 訳
岩波文庫
昭和17年
復刊 2007年2月

聖者 (岩波文庫 赤 470-1)

聖者 (岩波文庫 赤 470-1)