【島桑】セーラー万年筆創立100年記念万年筆

pakira_s2011-05-27

Pen ans Message の吉宗さんから入荷の連絡をいただき、Sailor100周年記念の島桑万年筆を入手してきました。
実際に見てみると、誠に素晴らしい出来で、感激しました。


島桑の家具や木工品については、以前の住まいの近くに下徳という江戸指物のお店があったので、そこに時々行って見ていました。
下徳 http://shimotoku.jp/
こちらのお店のHPでも、島桑が素材の筆頭に挙げられています。
私も下徳さんで見るまで島桑のことは知りませんでしたが、お店で拝見すると島桑の家具や小物は本当に美しく、手鏡なども内側から光を発するような仕上がりでした。
下徳のご主人が「島桑は本当に堅く、水にも強いのだが、よいものを作れる職人が本当にいなくなってしまった」と10年前にも言っておられました。


セーラーが島桑で万年筆を作るとのことを聞き、うれしいこととは思いましたが、あの島桑の美しさを小さなペンに生かせるのだろうか、と思っていました。失礼ながら「趣味の文具箱」の写真も、私が下徳で見た島桑の製品からすると、何だかもっさりしている感じでした。


しかし、今回実物を見てみると、下徳で見た島桑製の雰囲気の仕上がりで、誠に素晴らしいものでした。
内側から光を発するような、見る角度によって違う表情を見せる島桑は宝石のようで見ていて飽きません。
同じ面が、明るい感じにも暗い感じにも見る角度によって変わり、更にその中に瘤のような部分があると、輝きが浮き出して来ます。
キャップと軸の木目模様も1つの素材から作られているためきれいに合っており、特に私の手元の個体は木目が波のようで、ちょうどクリップの下のところで波が高まり、背後で静まるような感じになっています。
キャップの下の金の波の漆模様も、主張し過ぎず華やかな感じで、これらにちょうどクリップが碇を下ろしている感じになっています。


ペン先は、長刀でもない普通の中字で、むしろパイロットのFMくらいの感じです。
その意味では、仕事も含めた普段使いに一番使いやすい太さなのではないかと思います。
書き味自体に官能的な快感のあるタイプではないのですが、柔らかい感触の端正な21Kで、美しい日本文字を書くことができます。
もともと私はセーラーの書き味が好きなのですが、この島桑は、それがより上品になった感じで(吉宗さんの調整によるところもあると思います。)、居住まい正され感*1があります。


インク供給方式は、カートリッジかコンバータを使います。これも、普段使いということを考えると良い選択と思います。


本当に美しい日常使いの道具、という感じの島桑で、おそらくこんな万年筆は世界でも再び作られることはないのではないかと勝手に思っています。
正に百周年に相応しいものになったとセーラーさんには敬意を表したい気持ちです。
波に碇をさす意匠と伝統的な素材・仕上げを見ていると、大震災で傷ついた日本が、その誇りを取り戻すという意味でも、この万年筆が、このタイミングで発売されたことに意義深さを感じるほどです。


ほめてばかりでは何なので、苦言も。
私にはこのクリップは、どうしてもペリカンの真似に見えてしまう。
技術的にも凝っているのかも知れないが、折角、軸もニブも日本風の無二の仕上がりになっているのだから、クリップも徹底的にオリジナルな日本的なものにして欲しかったと思います。


ということで、このようなペンを出してくれたセーラーの皆さんに改めて感謝をしたいと思います。


(参考)
心騒ぐペン

*1:変な表現ですみません。書き味で居住まいが正される感じは、masahiro製万年筆にも強くあります。