しばしの仮の庵

私の尊敬する先輩で、手紙の住所欄に、いつも「しばしの仮の庵です」と書いてこられる方がいる。

当初は何かの事情で仮住まいをされているのかと思ったのだが、最近は、暫し生を享けてこの世にいる、この時間を与えられたものとして大切に過ごすとのお気持ちを表したものと思うようになった。

グレアム・グリーン「事件の核心」でスコービー副署長のオフィスについての記述がある。細部は忘れてしまったが、部屋から自分のものを無くしていく、という記述が印象的だった。エックハルトの著作を思い出す。

翻って自分のことを考えると、自らの環境を整えるために随分資源を使っている。

それは、弱い心を支えるためではあるのだが、一方で麻薬のように自らを蝕むものであるかもしれない。

私も、せめてそれらを少なくしていくよう努めたいと思う。



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