祝言

今日の会合でご一緒した78歳のSさんのお話。
27歳の頃、当時はそんな年まで独身でいたのはめずらしかったこともあり、縁談を持ってくれる人もいて、結納も交わし、祝言直前までいった人もいた。
その人とは別に恋愛関係というわけでもなかったのだが、その人から

「実は私には好きな人がいるのです。
でも私からこの縁談を断ったら勘当されてしまいます。
あなたから断っていただけないでしょうか」

と言われたとのこと。
そこで、Sさんは、その縁談はお断りした。
その後、また縁談を持ってくれる方がいて、その話の相手についても特に好きというわけでもなかったが、かと言って断るという理由もないので結婚した。
それが今の妻です、とのことでした。


私の母が、よく私の叔母の話をする。
叔母のことを好きな文学青年がいて、叔母もにくからず思っていた。
「娘さんをお嫁さんに下さい」
と頼みに来たその人に、父(私の祖父)が厳しく断っていた。
叔母には寺を継がせるために、僧侶を婿にとる予定だったのだ。
叔母は一人でよく涙を流していたという。
その後、婿に来た人は、すぐに出奔して戻ることはなかった。


私は、本当に、若い二人を見かけるたびに幸せを祈らないではいられない。
昔よりも今は自由があるかもしれないけれど、だからと言っていつもそれでしあわせかもよく分からない。
よき日々を祈りたい。