論語より

里仁第四

 子曰(のたま)わく、富と貴(たっとき)とは、是れ人の欲する所なり。其の道を以て之を得ざれば、處(お)らざるなり。貧(まずしき)と賤(いやしき)とは、是れ人の悪(にく)む所なり。其の道を以て之を得ざれば、去らざるなり。君子は仁を去りて悪(いず)くにか名を成さん。君子は食を終わるの間も、仁に違うこと無く、造次にも(*慌ただしい場合でも)必ず是(ここ)においてし、顛沛にも(*つまずいてひっくりかえるような時でも)必ず是(ここ)に於(おい)てす。
 (訳)
 先師が言われた。
 人は一般に裕福になり、高い地位に登りたいと願うものである。然し、正しい人の道によって得なければ、それには満足しておらない。貧困にはなりたくなく、低い地位にはおりたくないというのが一般である。然し、正しい人の道によることがなければ、貧困から逃れようとして焦らない。君子は、仁の道から離れて何処で有徳の立派な人物だと称えられようか。君子は、食事をする短い間も仁の行に違うこと無く、慌ただしい場合でも必ず仁の道により、躓いてひっくり返るようなときでも仁の道から離れることはない。