憧れ

札幌からの帰りの飛行機の中。窓際に座った私の隣に座った女の子が、飛行機の窓の外をずっと見ている。
窓と彼女の間にいる私の存在が、とても邪魔のようにも思える。
高校生か、せいぜい大学の1,2年生だろうか。
少し小柄だけれど、痩せすぎず、もちろん太ってもいない均整のとれた容姿。
ニキビが結構でている、大きな瞳に普通のセルフレームのメガネをかけた顔。
私は前日あまり寝ていなかったこともあり、彼女の隣でうつらうつらしながら過ごしていた。
ふと気付くと隣の席が空いている。
私も席を立ち、通路でレストルームの順番を待つ人々の列に加わる。といっても二人くらいだが。
出てきた彼女に、「席を代わりましょうか。」と声を掛ける。
彼女は目を輝かせるようにして「はい」と頷く。
私がレストルームから席に戻ると、彼女は窓際に座り、
「荷物を移しておきました。ずっと窓を見ているから気になりますよね。」
と言う。

気になるのは、君の視線ではない。
君の、空への憧れ、未来への憧れだ。

席を代わると、彼女はずっと窓から外を見ている。
かつて私も雲の王国に感激したことを思い出す。

私はと言えば、大島弓子の本を読みながら、泣いていたのだった。