水ます雨の

枕草子274段。
雨があまり好きではない清少納言ですが、そんな憂い雨の日にこんな手紙をもらううれしさ。

つねに文おこする人の、「なにかは。いふにもかいひなし。いまは」といひて、またの日おともせねば、さすがにあけたてばさしいづる文の見えぬこそさうざうしけれと思ひて、「さても、きはきはしかりける心かな」といひてくらしつ。
又の日、雨のいたくふる、昼までおともせねば、「むげに思たえにけり」などいひて、端のかたにゐたる夕暮に、傘さしたるものの、持てきたる文を、つねよりもとくあけて見れば、ただ「水ます雨の」とある、いとおほくよみいだしつるうたどもよりもおかし。