バヤデルカ

レニングラード国立バレエ(ミハイロフスキー劇場バレエ)による公演。
ルジマトフがソロル役。
今回は、しみじみと見ることができました。
バレエ、踊りもとてもよかったですが、劇として見応えがありました。
特に、以前、マリンスキー劇場の公演で見た際には憎らしく浅薄な存在にしか見えなかった大僧正が、今回は人間の業を背負う存在として胸に迫るものがありました。
マリンスキー劇場の公演の際はルジマトフ・ロパートキナという素晴らしい組み合わせでしたので、上演内容ではなく、見る私の側で、これを鑑賞する心の態勢ができた、ということでしょうか。


自分の横恋慕する巫女のニキヤがソロルと愛し合っていると知ったときの嫉妬。
嫉妬のあまり藩主にそのことを告げ、そのために藩主はニキヤを殺そうとすることを知ったときの動揺。
ニキヤが毒蛇に噛まれたとき、自分に従ってくれれば命を救う解毒剤をあげようとニキヤに言ったのに拒絶されたときの絶望。
死んでいくニキヤを見つめる呆然。
すべての人が息絶えたにもかかわらず、自分だけは生き残り、神からの落雷を受け苦しみながらもなお死ぬこと能わず罪と業を背負って一人屹立する姿。


カーテンコールでも表情を崩さなかったのがよかったと思いました。
こうした役に共感できるのも、自らの行動も含めて、人間が不条理な存在であることを見、経験してきたためであるかも知れません。
また、結果的に二人の女性を苦しめてしまうソロル
心に反して、ガムザッティに刃を振り上げてしまうニキヤ。
いずれもかつてであれば否定のみをしていたように思います。