この町

今日は、報告書の印刷をお願いしようと思って、通勤の通り道にある、盆栽が置いてあって猫がいる店というか工場に行きました。
ブザーを押したり、「こんにちは」と挨拶をするのですが、返事がありません。
でも、そのたたずまいは、今し方一作業を終え、次に取りかかろう、という感じの雰囲気。
いくら声をかけても、答がないので、外に出てみると、おじさんがバン型の車に包みを積んでいるところでした。
「このお店の方ですか」
フォークリフトを置いてある方を手で示しながら尋ねると、その通りとのこと。
印刷のお話をすると、
「うちは製本だけで、印刷はやっていないんだ。もし、印刷してきたら製本してあげるけど。」
とのこと。
それも大変だな、と思って小首をかしげていたら、
「知り合いの小口の印刷をやってくれるところを紹介しましょうか」
と言ってくれる。
そして、バンの荷台から出てきて、お店の中に入り、名刺を出す。
私は電話ででもお話ししてくれるのかな、すぐ対応してくれて親切だな、と思ってみていたら、
「すぐ近くだから一緒に行きましょう」
と言う。喜んでついていくと、確かに15mほどのところに、ビルの地下に降りていく急な階段があり、その先が印刷屋さんだった。
製本屋さんが挨拶すると、入り口近くに座っていたおばあさんが、挨拶を返しながら、
「払いに来てくれたの」と聞く。「それはまだ、後で」とおじさんは言い、私に手を振って帰っていく。
私も礼を返し、「ありがとうございました。」とお礼を言って別れる。
この町に住んで、もう5年ほどにもなるけれど、こうして地元の人たちとお話をする機会はなかった。
町の違う顔が見えたように思った。