母の指



今日は、86歳の母の所に行き、一緒にパズルなどをやる。

そのパズルはナンクロというもので、調べて見るとナンバークロスワードパズルの略であるらしい。

母がそのときやっていたのは漢熟語で白マスを埋める物だった。

母は、そのパズルで分からないところが一箇所ある、とのことで、私にも正しい答が分からないか、と尋ねる。

少し考えてみたが分からないので、手持ちの電子辞書の逆引き機能を使い、何とか正解らしき物を得ることができた。

母は大変喜び、すっきりしたと言っていた。

自宅に戻ってから母に電話した時もその話をしていたので、余程嬉しかったのだろう。

母の人差し指は少し曲がっている。

普通の人であれば真っ直ぐ付いている指先の第一関節までの部分が、20度ほど中指側に傾いている。

しかし、母はそれを意に介する風もなく、自分の分からない部分のマスを指で示している。

母は別に格好などを構わなくなってきている訳ではない。特に、お客さんや私が行く時には身ぎれいにしている。

母が自分の指の話をしたのは、実は私も成人して本当に随分経ってからだった。

子供の頃の事故で指が少しおかしくなった。しかし、それはずっとそれまで人に知らせないようにしてきた。

手術もしたのだけれど、うまくいかなかった。

今日、母が全く憚る様子もなくその指を見せながらパズルを一緒に解いている様子を見ていて、私はとても嬉しかった。

本当に、そのような指の傾きなど、或いは他の普通の人と違う点も、母に限らず気にすることなど何もないのだから。



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