いくつくらいだろう、80歳は優に超えているのではないかと思われるお婆さんが、
息子が風邪のようなので薬だけ欲しい、と医院の受付窓口で言っている。
受付の看護婦さんが、
「毎月出している定例のお薬ならまだしも、個々の症状に対応するための薬を診察なしに出すことはできない、
ご本人もずっと来ていないし、保険証も4ヶ月確認出来ていないので、お申し越しの件は難しい。」
と言っている。
お婆さんは、
「お金は、保険適用外の高い金額でも構わない。
薬を出してくれるかどうか兎も角先生と相談してみてくれ。」
と食い下がっている。
看護婦さんは、相手の熱心さに押されて、とりあえず引き取った。
このお婆さんと息子さんはどんな生活をしているのだろう。
息子さんは会社の方にいる、とお婆さんは言っていたので、働いているのだろう。
小さな家業のような会社か、或いはある程度の規模の企業なのかは分からない。
このお婆さんの息子さんであれば、既にかなりのお年だろう。
このような、そのまま言うことを聞けば法令違反にもなりかねない話なので、看護婦さんも余り積極的に対応している雰囲気がない。
他の業務を忙しそうにやっている。
私は何だかいろいろな意味でしみじみとしたのだった。
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