ダッドリー・ストーンの不思議な死

pakira_s2007-02-03

森高千里さんの曲を通して聴いてみて、失礼ながら段々光の輝きが失われていく雰囲気を感じた。
それと反比例するようにジャケットやビジュアルは美しく手の込んだものになっていく。
最後の曲の「一度遊びに来てよ」というのは私の大好きな曲であったが、「一度遊びに来てよ99」として発売されたシングルは、メロディーも歌唱も妨げるようなアレンジになっていてびっくりした。
よい時期に結婚し、よい生活に入られたように思える。
引退することによって伝説を残すことができたし、多くの後進が彼女の曲を歌っている。
今、CM等でみる森高千里さんは女性として輝いているように見える。


ふと、かつて「十月はたそがれの国」という短編集の中にあった「ダッドリー・ストーンの不思議な死」という小説を思い出した。
流行作家が、それを妬む者から殺されかかる。彼は筆を折ることを約束し、それによって死を免れる。
その後、ある人が、実は彼が生きていることを知り、会いに行く。
その元作家は、自分の「殺人者」に感謝している、と話す。
もし自分が当時執筆中だった作品を発表していれば、それこそ囂々たる悪評の中で自分で命を絶っていたかもしれない。あの時、生かしておいてくれた「殺人者」のおかげで、結婚し、子どもを育て、市政に関わり、人生を存分に生きることができた。本当に感謝している、と。
私は読んだ当時は(中学生か小学校高学年くらいか)「ふーん」という感じしか持たなかった。
しかし、今は本当にそのとおりだと実感する。
終わらない。生きている限り。そこからどんな素晴らしい人生も創り出せる。未練こそ敵だ。
と本当に素直に思える。

10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

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