背教者ユリアヌス

この本は、今まで何度も読もうと思って手には取っていた。
何度か読み始めたこともあるけれど、何となく気を引かれずにしまった。
今回は、しかし、ふと読み始めたら止まらなくなり、文庫本3冊を一気に読んでしまった。
本当に、本とは、出会いの時がある。
静かにこの時を、この本も待っていてくれた。
それでも、この本もまた、若い頃に読むことを薦めるし、若い頃読んだのであれば感動はいかほどであったろう、というくらいよい本であった。
今の私の年になると、自らの人生も多くのことがあり、こんなに長くしっかりした小説を読んでもまだ描き足りないのでは?とふと思うときもある。しかし、今回この本を読んで、そうではなく、自らの人生でこのような雄渾な小説をより鮮やかなものとして周囲に示すことこそがなすべきことなのだな、と思った。
人は、みな王族たる誇りを持って生きる、ということを大切にするべきなのだろう。
エスは「自らの先祖にアブラハムがあるなどと思っても見るな」と言っていたが、しかし、今は、自らは王の血筋であることを皆が自覚することからいろいろなことが始まるような気がする。

背教者ユリアヌス (上) (中公文庫)

背教者ユリアヌス (上) (中公文庫)