不吉の地

夢の話。
新宿の辺りは不吉の地で、かつてはそこを抜ける一本の道しかなかった。
その道自体も不気味なものであったが、その道から外れた場所は、何か異界、雰囲気としては、タルコフスキーの「ストーカー」における「ゾーン」のような所か。そして、そんな話しを聞きながら、いつの間にかその異界に私の身は移っていた。
私が、少し高くなっている線路の側の、枯れた草の生えている所をふらふらと歩いていると先方から女の人が二人歩いてくる。
その人たちは、この不吉の地に住んでいる人たちを助けようとしている人たちなのだろう。すれ違う時、止まって私に「今日は何か食べましたか」と聞く。私が何と答えていいか分からず黙っていると、「では、これを」と言って泥にまみれて黒くなっている木の枝の又の小さな固まりをくれる。おそらく食物なのだろう。
私は、少し高くなっているところから降りて下の道に行く。そして、道なりに、暗い、鉄道の下を通っている四角いトンネル状になっている道に入っていく。その中程には何か物体がぶる下がっている。その脇を通る時、襤褸々々のもののついた人間の足が見えた。してみると、そのぶる下がっているものは死体であったのだ。
そして私はまたいつの間にか、西武池袋線江古田駅の辺りに抜ける。とは言え、当然ながら現実の場所のようではなく、異界の続きのような、人々がふっと異形の者たちになってしまうような雰囲気。私は、そこで静かに佇むことのできる場所に行きたいと思ったが、思い浮かばない。その駅の北側に回ると、黒い髪で、濃紺のコートに赤いつやつやした紙のバッグを2つ持った少女が階段を上っていくところだった。この世界で初めて見る生き生きした人であったが、私が声を掛けようとする間に、階段を素早く上がっていってしまった。


私は盛岡が大変寒かったので、少々体調を崩してしまい(寒くて風邪を引きそうになった)、少しうなされるように、こんな夢を見たのかも知れません。今日は本当は、北千住に私の好きな友人とお酒を飲みに行こうと思っていたのですが、急に携帯電話がつながらなくなってしまいました。北千住には一度だけ行ったことがありますが、やはり不思議な場所であった印象があります。電話のことといい、少し風邪気味でぼうっとした頭のせいか、夢が続いているような、現実感のない気持ちでいます。